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相続手続きハンドブック(相続税がかからなければ、何もしなくていいの?)


1.相続税かかる?かからない?
 相続する人全員が相続税を納めなければならないという訳ではありません。平成14年の統計では、相続税がかかったのは約4.5%、ということは95%以上の相続人には相続税がかかりません。
 なぜでしょう・・・? それは基礎控除があるからです。
 基礎控除額は、5000万円+(1000万円×法定相続人の数)ですが、この他にも、配偶者控除など各種の控除があります。
 相続税はこれらの控除額を超える部分に対してかかりますから、相続税を納めなければならないのは、なかなかのリッチ・セレブな人々、いわゆる資産家ということになります。

相続税の各種控除
(1)基礎控除
5000万円+(1000万円×法定相続人の数)

(2)配偶者控除
1億6000万円。但し、法定相続分がこれを上回る場合は、法定相続分相当額まで。
(法定相続分は後述)

(3)未成年者控除
満20歳に達するまでの年数(端数は1年と計算)に6万円を乗じた金額。

(4)障害者控除
一般障害者は、満70歳に達するまでの年数(端数は1年と計算)に6万円を乗じた金額。重度の障害をもつ特別障害者は12万円を乗じた金額。

(5)相次相続控除
相次相続とは、相次いで相続が発生する事をいいます。短期間に相次いで相続が発生すると税負担が過重になる為、相次相続控除によりその軽減が図られています。
10年以内に2回以上の相続があったときは、前回の相続にかかった相続税の一定割合を、今回の相続税額から控除できます。

(6)外国税額控除
相続財産が国外にあり、その国の法令により相続税に相当する税が課税されている場合、二重課税を防止する為に相当額を相続税から控除します。

2.相続手続きってナニするの?
 土地・建物、預貯金、株式、ゴルフ会員権、電話加入権、墓、自動車の名義変更や、保険金・年金の請求、クレジットやカードの脱会など、亡くなられた方の財産的な権利を清算することです。必要であれば、相続税の申告もします。
 具体的には、まずその方が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本等を集めて、相続人を確定します。戸籍謄本等を集めるには、大抵の場合、生まれた時の戸籍はわかりませんから、亡くなった時の戸籍から遡っていくことになります。そして、それぞれの戸籍地の役所からひとつひとつ取り寄せていきます。
 他方で、どのような財産が有るか無いか、あればその価格を調べます。価格は、残高証明書や評価証明書などを取り寄せます。
 その上で、遺産分割協議をして名義変更などをします。但し、遺言があればその内容に従います。(遺産分割協議・遺言については後述)
 名義変更は、土地・建物や預貯金など財産の種類でやり方が異なりますし、同じ種類の財産でも、例えばA銀行とB銀行では必要な書類が異なります。戸籍謄本等がコピーでいいところもありますし、原物でなければならないところもあります。

 クエスチョン借金も財産って言うけど?
 アンサー借金(負債)も相続されます。但し、相続放棄や限定承認という手続きにより承継しない方法もあります。(後述)

3.放っておいたら、どうなるの?
 名義変更等は、絶対にしなければならないという「決まり」はありません。(相続税は申告しなければなりません)原則として、相続開始とともに、財産は相続人に承継され、保険金や年金の請求権が発生し、クレジットやカードの脱会もできるからです。  しかし、手続きをしていないと後々面倒なことになる可能性があります。相続人が誰なのかとか、その人が亡くなったことは、相手方や第三者には分からないことがあるからです。

 例えば、預金口座では、銀行は口座名義人の死亡を知ると、その口座を凍結してしまいます。そうすると、預金の払い出しを始め、公共料金やクレジットカードの引き落としもできなくなり、支払不能になってしまいます。

 例えば土地建物では、相続した人がそのまま住み続けているうちはいいでしょうが、転居などでその土地や建物を売るとなると、一旦は相続人の名義にしない限り買主への登記ができません。
 相続登記は、原則として、相続人全員が関与しなければなりません。(遺言による場合は単独でも可)全員の書類や印鑑を揃えるには、手間や時間がかかりますし、もし誰かが亡くなっていればその相続人の分も必要です。それが三代とかに及んでは、話自体がまとまらなくなる可能性すらあります。

 例えば、保険金や年金。これは請求しないともらえません。そればかりか、請求しないままでいると、請求する権利そのものが消滅してしまい、気づいた時には請求できないという可能性もあります。

 例えば、クレジットやカードの脱会では、脱会手続きをしないと、年会費や手数料を支払い続けることになります。

 ですから、相続手続きはしておいたほうがいい、と言うか、しておくべきなのです。

4.誰が相続するの?
 配偶者は常に相続人になります。この配偶者は法律上の夫婦でなければなりません。婚姻届を出していない内縁や事実婚では、どれほど長く一緒に暮らしていても相続人にはなりません。
 配偶者とならんで相続人になるのが、第一順位として、子が相続人になります。子は非嫡出子(婚外子)でも相続人になります。また、子がなくても孫があればその孫が、さらに孫がなくても曾孫があれば、となります。これを代襲相続と言いますが、注意していただきたいのは、相続発生時点で子がすでになく、またその時点で孫があることを要する点です。再代襲(孫がないときの曾孫)も同様です。
 子以下がなければ、第二順位として直系尊属が相続人になります。実父母・養父母のことですが、養父母は相続人になりません。また、親がなければ祖父母、祖父母がなければ曽祖父母、となります。
 第三順位として兄弟姉妹が相続人になります。これも義理の兄弟姉妹はなりませんが、父母の一方だけが同じ兄弟姉妹(半血)は、相続人になります。また、兄弟姉妹がなくてもその子があればその子がなりますが、その子がなくても孫があれば、という風にはなりません。兄弟姉妹の代襲は、兄弟姉妹の子すなわち甥や姪までで、再代襲はありません。

 このような順番で相続人が決まりますが、その中でも、相続欠格に該当したり、廃除された人は相続人になれませんし、相続放棄をした人ははじめから相続人ではなかったことになります。(詳細は後述)
 ちなみに、相続する人を相続人と言うのに対して、相続される人(亡くなった人)は被相続人といいます。

5.どのくらい相続できるの?
 次に、各相続人が相続する割合ですが、各相続人が相続財産を承継する持分割合を、相続分といいます。
 相続分は、遺言によって指定することができ、これを指定相続分といいます。
 指定がなかった場合は、法律に定められた割合になり、こちらを法定相続分といいます。

法定相続分は以下のとおりです。
(1) 配偶者と子が相続人のとき 配偶者 1/2 子1/2
(2) 配偶者と直系尊属が相続人のとき配偶者 2/3 直系尊属 1/3
(3) 配偶者と兄弟姉妹が相続人のとき配偶者 3/4 兄弟姉妹 1/4

 相続人が配偶者だけ、又は子、直系尊属、若しくは、兄弟姉妹だけの場合は、各自が全てを承継します。
 また、子・直系尊属・兄弟姉妹が複数名いる場合、各人の相続分は均等割になります。
 子のうちで、非嫡出子の相続分は、嫡出子の1/2になります。
 兄弟姉妹のうちで、父母の一方だけが同じ兄弟姉妹の相続分は、父母の双方が同じ兄弟姉妹の1/2になります。
 以下にかかわらず、相続分が遺言で指定されていれば、遺言の内容に従って分配します。また、遺言がなくても、遺産分割協議を相続人全員で行い、分配方法を決めることもできます。必ず全員です。一人でも欠けたら、その協議は無効になってしまいます。
 ちなみに、遺言の内容とは違う分配方法にするのも、相続人全員の話し合いによれば可能です。
 遺言がなく、遺産分割協議も行わないとなると、全ての相続財産について、相続人全員が法定相続分による割合で共有するということになります。
 共有とは、何人かでひとつの物を所有するが、各人がその物全体について処分できるのではなく、持分という一定の割合でしか、処分する権利を持たない状態です。
 ある財産を法定相続人全員で共有或いは、何人かで共有することになった場合、後日その財産を他人に売ったりするには、共有者全員の同意が必要ですし、契約書の押印も全員の印鑑が必要になるなど、何をするにも全員で、ということになります。(但し、修理や修繕は全員のためになるので、各人が単独でできます)
 そして、共有者の誰かに相続が発生したら、その亡くなった人の相続人も、共有者の仲間入りをします。そんなことが二代、三代になってしまうと、処分する話自体がまとまらなくなる可能性すらあります。
 ですから、後々のことも考えた遺産分割協議をしておくことをお勧めします。

6.相続できない人ってどんな人?
(1)相続放棄
相続放棄をすると、はじめから相続人でなかったと同様の効果があります。すなわち、財産も借金もすべてが継承されません。
相続放棄をするには、相続開始を知ってから3ヵ月以内に、家庭裁判所に申述しなければなりません。

(2)限定承認
限定承認をすると、相続人にはなりますが、次のような効果があります。
相続財産が明らかに借金のほうが多い場合は、相続放棄によっても負担を免れることができますが、限定承認は、借金のほうが多そうだけどはっきりしない場合にその清算を行い、その結果借金が残っても責任を負わず、プラスの財産が残ればそれを承継するという制度です。
限定承認をするには、相続開始を知ってから3ヶ月以内に、財産目録を調整して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければなりません。
また、相続人が数人ある場合には、相続人全員でしなければならず、家庭裁判所は、相続人の中から相続財産管理人を選任します。
限定承認をすると、相続財産はまず借金の返済に充てられます。借金の総額に相続財産が不足する場合には、各債権者の割合に応じて返済をします。全額を返済できて残りがあれば、相続人が承継します。

(3)廃除
相続人が、被相続人に対して暴力をふるったり、重大な侮辱を加えた、あるいは著しい非行があったなど、相続人としてふさわしくない行為があった場合、被相続人は家庭裁判所に対して、その相続人の相続権を失わせる旨の請求ができます。
この相続廃除の請求は、生前に被相続人自身で行うこともできますし、遺言により相続廃除の意思表示をすることもできます。
遺言による場合は、遺言執行者が家庭裁判所への請求をしますので、遺言執行者の指定が必要です。

(4)相続欠格
相続人に該当しても以下の場合は、相続人にはなれません。
1.わざと被相続人や相続について先順位・同順位の人を殺した、又は殺そうとしたために、殺人や殺人未遂の罪で実刑を受けた者。
 執行猶予付では猶予期間が経過すると刑は消滅しますので相続欠格には当たりません。
 また、過失致死や傷害致死も「わざと」「殺そうとした」ではないので相続欠格には当たりません。
2.被相続人が殺害されたことを知りながら、その殺害者を告訴告発しなかった者。
但し、殺害者が自分の配偶者や直系血族であった場合は相続欠格には当たりません。両者の関係からして、かばうのも仕方ないといった理由でしょうが、兄弟姉妹は除外されているので(兄弟姉妹は傍系血族)、告訴しないと自分が相続欠格になってしまいます。

3. 詐欺や脅迫によって、遺言を作成・取消・変更させたり、逆に、遺言の作成・取消・変更を妨害した者。
 要は、嘘の遺言を書かせた者です。

4.遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者。
但し、自分が不当に利益を得ようとする目的がある場合に限られますので、例えば、兄に財産の2/3、弟に1/3を相続させるという遺言書がある場合に、兄がその遺言を隠して平等に相続しようとすることは、「自分の利益」のためにではありませんので、相続欠格にはあたりません。

 相続欠格にならないということは、相続人になれるということです。

 クエスチョン相続人がいなかったら?
 アンサー特別縁故者が承継する可能性があります。特別縁故者とは、亡くなった人と生計を一緒にしていた人や、療養看護に努めた人、財産の維持増加に貢献した人など、特別の関係があった人のことで、家庭裁判所に対して相続財産分与の請求ができます。内縁の夫婦はこの特別縁故者に該当する可能性がありますが、普通に病床の面倒を看ていた息子の嫁はこれに当たりません。
 気をつけなければならないのは、特別の関係があっても、相続人が一人でもいれば特別縁故者とは認められないということです。

 クエスチョン特別縁故者もいなかったら、どうなるの?
 アンサー国庫に帰属、すなわち、日本という国の所有物になります。

7.遺言と遺産分割協議
 遺言では、相続分や具体的な相続の仕方(誰がどの財産を承継するか)を指定できます。又、相続人以外の人へ財産を分ける遺贈もできます。
 遺言であれば、遺産分割協議をしなくても名義変更などの手続きができます。(遺産分割協議は相続人全員でしなければなりませんが、遺言によれば、誰かひとりででも名義変更などの手続きが行えます)

遺産分割協議は、遺言による指定がない場合に、具体的に誰がどの相続を承継するかを決める手続きです。必ず相続人全員で行います。一人でも欠けたら、その協議は無効になってしまいます。
例えば、隠し子がいて協議が終わった後に名乗り出てきた場合は、相続人全員による協議ではなかったことになり、再度その子を含めて協議しなければなりません。
また、相続開始後の裁判で認知されると、その子は生まれたときから被相続人の子であったことになり、やはり相続人全員による協議ではなかったことになりますが、この場合は、協議そのものは有効で、その子は金額を請求することができるだけとなります。
隠し子にしろ何にしろ、未成年者がいる場合は、その者の代わりに協議に参加する者として、特別代理人を家庭裁判所に選定してもらいます。特別代理人を選任せずに未成年者自身が協議した場合も、相続人全員による協議ではなかったことになります。


以上のように相続手続きは、精神的にも肉体的にも負担を強いられますが、残された家族で故人のことを思い起こす良い機会です。
最愛の人をなくして、一番つらい時ですが、故人が頑張って作り上げた足跡を思い起こしながら整理する・・・。そう考えたら少し肩の荷が下りるのではないでしょうか・・・

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